発がん物質と遺伝子
たばこの煙に含まれる有害な化学物質は200種類を超えており、この中には発がん物質も多種類含まれています。
たばこの発がん物質は主にタールに含まれ、これが細胞の遺伝子に傷をつけます。
この傷は通常、体の中の働きによってすぐに修復されるのですが、その働きには個人差があって、修復がうまくいかない場合もあります。このようにして細胞のがん化が起こります。
発がん物質はたばこの煙を吸うことによって、口、喉を通って気管支から肺に入ります。
しかし、それだけではありません。唾液とともに飲み込まれ、食道・胃・腸などの消化管をはじめとして、全身にばらまかれます。
たばこを吸う人と吸わない人を比較すると、吸う人には明らかに発がんのリスクが増える傾向がみられ、それも多くの臓器にわたっています。
喫煙率とがん
部位別のがんによる死亡率をみると、男性では肺がんが急激に増え続けているのが特徴で、今回ついに4万人を突破しました。女性では、肺がんや大腸がん、乳がんがじわじわと増えています。
がんは1981年以降、日本人の死因のトップで、2002年の死亡数は前年に続いて30万人を超えました。3人に1人はがんで死亡したことになります。
先進国では禁煙についての取り組みが進み、がん患者数は抑えられるようになりました。
しかし残念なことに、日本の喫煙率は男性52.8%、女性13.4%、平均33.1%(2002年WHO発表)と男性が依然として高く、女性でも若年層で高くなっています。
たばこを吸い始めた年齢が若いほど、発がんのリスクが増えます。これは、吸っている年月が長いほど累積するたばこの本数が増えることと、若い人の細胞は発がん物質によるダメージを受けやすいからです。
未成年の喫煙率は中学生から高校生にかけて増えますが、なかには小学生から喫煙が習慣になっている子どもがいます。
親が身近でたばこを吸えば、たばこが「悪いもの」だと、子どもは思いません。子どもの目前でたばこを吸うことは、子どもの寿命を縮める結果につながることを、認識し直さなければなりません。
受動喫煙
実際に、たばこを吸う習慣のある子どもと、ない子どもの体位を比較してみると、身長・体重・胸囲すべての項目において、喫煙する子どもたちが明らかに劣っています。
さらに、体力測定でとくに目立つのが喫煙する子どもの持久力低下です 。このように、たばこを吸うことは成長期の子どもの体に、非常に悪い影響を及ぼします。
子どもの喫煙は、たばこを吸う大人の責任であるともいえます。子どもが喫煙の習慣をもたないよう、十分な注意を払いたいものです。
たばこの煙には、本人が吸う「主流煙」と、たばこの先から立ちのぼる「副流煙」とがあります。
煙には多くの有害物質が含まれていますが、その量は主流煙よりも副流煙のほうに、数倍から数十倍も多いことがわかっています。
この副流煙を、自分の意思とは無関係に吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と呼んでいます。
こうした“好まない喫煙”によって病気にかかる危険度は、肺がんでたばこの害を受けない人の1.19倍、心臓病で1.25倍にも高まります。たばこの健康被害は、決して吸う人だけの問題ではないのです。
禁煙外来
どうしても自力で喫煙をやめることのできない方は、禁煙外来を受診されることをおすすめします。禁煙外来は、たばこをやめたい人向けに作られた専門外来の科目です。
ヘビースモーカーを対象にした一定の基準による条件付きではあるものの、条件を満たす喫煙者には健康保険の保険適用がされています。
以前は、禁煙にかかる費用は全て健康保険の対象外(自由診療・保険外診療)だったので患者の全額負担でしたが、2006年4月1日より、一定の基準を満たす患者における禁煙治療に関して保険適用が中央社会保険医療協議会の答申により認められ、ニコチン依存症管理料や、ニコチンパッチなどが保険が適用されています。
禁煙治療が保険適用される医療機関は、敷地内禁煙であることなど一定の要件を満たして届出の上、認可を受ける必要があります。
禁煙外来にて禁煙治療を受ける為には、患者側に各種の条件が必要とされ、これらの条件を全て満たした場合にのみ、禁煙治療を行う事ができます。