喫煙と関連のあるがん1
喫煙とがんの関連については、これまで動物実験やヒトを対象とした疫学研究など、さまざまな研究が行われ、これら数多くの研究は、国際機関などによって総括報告としてまとめられてきました。
これらの報告書は一貫して、喫煙が肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となる(「因果関係がある」と表現されます)と結論づけています。
2002年、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、喫煙とたばこ煙のヒトに対する発がん性を、最新のデータに基づいて評価しました。その中で、喫煙とたばこ煙は、最も強い「グループ1:ヒトに対して発がん性がある」と判定されています。
胃がん、肝臓がん、子宮頸(けい)がんは、それぞれピロリ菌、肝炎ウイルス、パピローマウイルスという微生物感染との関連がありますが、それらの感染の影響を除いても喫煙と因果関係があると判定されました。
鼻腔(びくう)・副鼻腔がんや腎細胞がんなどは他のがんに比べて症例が少なく、研究も少なかったのですが、数少ない研究でも一致して喫煙年数や喫煙本数との関連が報告されていることから、
因果関係があると判定されました。
喫煙と関連のあるがん2
多くのがん種で、喫煙年数が長いほど、1日の喫煙本数が多いほど、また喫煙開始年齢が若いほど、がんのリスク(がんになる、またはがんで死亡する危険性)が高くなります。
紙巻きたばこ(シガレット)以外のたばこ(葉巻やパイプ、または葉たばこで豆などをくるんでかむたばこなど)が用いられている国での研究報告によっても、口腔(こうくう)がんや咽頭(いんとう)がんとたばことの因果関係が示されています。
口腔がんはお酒との組み合わせでさらにリスクが高くなるといわれています。
咽頭がんについては他の要因の影響の可能性がありますが、それだけでは喫煙者でリスクが高くなることについて説明できないとされています。
肺がんについては明らかに喫煙とがんとの関連性が見出されています。一方、大腸がん、女性の乳がんについては関連があるのではないかと専門家の間でも議論が続いていますが、食事や運動、ホルモンの状況など、他の要因の影響が大きく、現時点では喫煙と因果関係があるとはされていません。
これらの因果関係の評価は、2004年にまとめられたアメリカ公衆衛生総監報告でも、ほぼ同じ内容となっています。
したがって、喫煙を行うことはすなわち、こうしたがんになるリスクを高めることとなります。
もちろん、喫煙以外にもさまざまながん因子は存在しますし、喫煙をしなかったからといってがんに絶対ならない、というわけではありません。
しかしながら、喫煙をしないだけで、発がんリスクを大きく低下させることができます。健やかな生活を送るために、喫煙は極力避けるに越したことはありません。